入浴 wikipedia|無料辞書
入浴(にゅうよく)とは、主に
人が身体の清潔を保つことを目的として、
湯や
水・
水蒸気などに身体を浸すことを指す。
◆歴史
◇ 中東・中央アジア
紀元前1世紀ごろから、
中央アジアで蒸し風呂があったと思われる。これは、高温に加熱した石に水をかけることで蒸気を発生させて入浴を行った。燃料などが少なくて済み手軽に使用できたため、冷水による入浴に適さない地域で広まった。
中東では、この蒸し風呂が、
公衆浴場(ハンマーム)となった。また
ロシアや
北欧に伝わり
サウナの原型ともなった.
◇ ヨーロッパ
ローマ帝国時代には、各植民都市に共同浴場が作られた。入浴様式は、蒸し風呂の他に、広い浴槽に身体を浸かる形式もあったようだ。
217年につくられたローマのカラカラ大浴場は、2000人以上が同時に入浴できたといわれている。
古代ローマの入浴は、官営病院を持たなかったローマ人の感染予防施設としても使われた。
ローマの共同浴場は、時代の流れとともに、大衆化し社交場・娯楽施設としての意味が増してきた。一方で、
売春や飲酒蔓延、怠惰の温床にもなった。
次第に
キリスト教の厳格な信者からは、ローマ式の入浴スタイルは退廃的であるとされ、敬遠されるようになった。その後、
中世に
十字軍によって再び東方から入浴の慣習が伝わったものの、今度は
教会が入浴の行為は異教徒的として非難した為に、その後は入浴の習慣は無くなっていった。また共同浴場は、
梅毒や
ペストなどの伝染病の温床というイメージも入浴を衰退させる原因になった。結果、キリスト教徒の間では、入浴は享楽の象徴とされ忌み嫌われ、シャワーが主流になっていった。
中世ヨーロッパ(特にフランス)では、風呂に入ると皮膚の常在細菌が洗い流されて逆に病気になる、と信じられてきた。
ヴェルサイユ宮殿のバスタブは、建設された当初は使われていたものの、その後は
マリー・アントワネットが嫁ぐまで使われなかった。王侯貴族は入浴の代わりに頻繁に
シャツを着替え、
香水で体臭をごまかすようになった。これが
パリなどのフランスの大都市部の公衆衛生の悪化の原因の一つとなった。
しかし、
1875年に
イギリスで、「
公衆衛生法」ができ、入浴が奨励されるようになった。徐々にバスタブによる入浴が行われるようになった。さらに
19世紀、イギリスで
シャワーが発明される。以後、シャワーによる入浴が世界に広まった。
◇ 日本
もともと日本では
神道の風習で、川や滝で行われた
沐浴の一種と思われる
禊(みそぎ)の慣習が古くより行われていたと考えられている。
仏教が伝来した時、建立された寺院には湯堂、浴堂とよばれる沐浴のための施設が作られた。もともとは僧尼のための施設であったが、一般民衆への開放も進んだといわれている。特に、
光明皇后が建設を指示し、貧困層への入浴治療を目的としていたといわれる
法華寺の浴堂は有名である。当時の入浴は湯につかるわけではなく、
薬草などを入れた湯を沸かしその蒸気を浴堂内に取り込んだ蒸し風呂形式であった。
平安時代、
鎌倉時代になると寺院にあった蒸し風呂様式の浴堂の施設を、上級の公家や武家の屋敷内に取り込む様式が現れる。『
枕草子』などにも、蒸し風呂の様子が記述されている。次第に宗教的意味が薄れ、衛生面や遊興面での色彩が強くなったと考えられている。
浴槽にお湯を張り、そこに体を浸かるというスタイルがいつ頃発生したかは不明である。古くから桶に水を入れて体を洗う
行水というスタイルと、蒸し風呂が融合してできたと考えられている。この入浴方法が、一般化したのは
江戸時代に入ってからと考えられている。
だが、
漢方医の間では、入浴の習慣が広まることに危機感を覚えるものもいた。いわゆる
後世派と呼ばれる医師たちは
温泉療法以外による入浴は体内の気を乱して体に悪影響を与えると考えていた。
貝原益軒の『
養生訓』にも10日に1度ぬるま湯に沐浴すれば良く、それ以上の入浴は却って毒となると書かれている。だが、
古方派とされる医師たちは
実証主義観点から、適度な入浴は気の循環を良くして体内の毒物を外部に排出するのを助けると論じ、
蘭方医も
皮膚に
垢が付着することの危険性を論じて、「入浴害毒論」を批判している(もっとも民衆にとってはこうした論争は全く関心の外であったことは言うまでもない)。
現在、世界的に見ても日本人の入浴頻度はかなり高いが、江戸時代は一般的に入浴頻度がそれほど高くなく、銭湯などの共同浴場での入浴が一般的だった一方で、都市においては1日に何度も銭湯に行って入浴する者が多くいる事を記した書物があるなど、地域や生活水準、あるいは季節によってまちまちであった。
毎日入浴する習慣が全国的になっていくのは、家庭内へガスによる瞬間
湯沸器や水道水の普及が進んだ
高度経済成長期以降のことである。
近年は
シャワーが普及し、少人数世帯の増加と夏期に一日複数回入浴するためにシャワーのみ浴びるという人が増えた。また、高温の入浴は健康(特に高血圧)に悪い、と広まったため、ぬるめの入浴を好む日本人も増えるなど、入浴の仕方に変化が現れている。特に沖縄県では、浴槽を使う本土と違い、シャワーが原則である。
◆ 日本の入浴習慣
一般に、日本人の平均入浴温度は40〜43度程度といわれ、高い温水での入浴を好むと言われている。世界的に見ても高い温度の入浴を好む
民族といえる。
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